1、はじめに
編集部A 「月刊精神分析」読者の皆さん、こんにちは。編集部Aです。今回のテーマは「08年11月号 特集 私と分析」「09年02月号 特集 私と分析2」に続いて「私と分析3」を特集します。
「私と分析」では、立木歩実先生と宣照真理先生の「精神分析療法」との出会いから、精神分析家(インテグレーター)を目指すまでの経過をお伝えしました。「私と分析2」では、独立開業後の様子をお伝えしました。そして、今回「私と分析3」は、二人の女性精神分析家の「今」をお伝えします。
編集部Aは、ラカン精神科学研究所(滋賀県大津市)を訪問し宣照真理先生のインテグレーター(精神分析家)養成講座を受講しました。そして翌日、東京都新宿のJR新宿駅で東京精神療法研究所(神奈川県海老名市)の立木歩美先生にお会いできました。先生方お忙しい中、お時間を頂戴し大変ありがとうございました。
2、プロフィール
今号の登場人物のプロフールは以下のとおりです。
惟能創理(いのうそうり)
日本初のインテグレーター(精神分析家)
宣照真理・立木歩実・編集部Aのスーパーバイザー 。
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宣照真理(せんしょうまり)
精神分析家。ラカン精神科学研究所(滋賀県大津市)主宰。1958(S.33)年4月22日生まれ。
出身:滋賀県大津市。二女の母。
神戸親和女子大学児童教育学科(兵庫県神戸市)卒業。
会社勤務の後、結婚し専業主婦になる。
二女の子育てに悩み惟能創理先生の精神分析治療を受ける。
インテグレーター(精神分析家)養成講座を受講の後、独立開業。
現在、新進気鋭の分析家として、引きこもり不登校の子供を持つ母親を全力で支援している。
同研究所は「京都府ひきこもり支援情報ポータルサイト」の支援団体として登録。
連絡先:lacan.msl☆gmail.com(☆を@に変えてメール送信願います。スパム対策)

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立木歩実(たちきあゆみ)
精神分析家。東京精神療法研究所(神奈川県海老名市)主宰。
1954(S.29)年10月10日生まれ。
出身:神奈川県海老名市。二女の母。
尚美音楽専門学校ピアノ学科(東京都文京区)
(現:尚美学園大学 埼玉県川越市)卒業。
ピアノ教師をしながら結婚。
夫のうつ病に悩み惟能創理先生の精神分析治療を受ける。
インテグレーター(精神分析家)養成講座を受講の後、独立開業。
現在、新進気鋭の分析家として、東京首都圏を中心に母親代行業を精力的に展開。
連絡先:kiriko_left☆yahoo.co.jp(☆を@に変えてメール送信願います。スパム対策)

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編集部A(へんしゅうぶえー)
月刊精神分析(げっかんせいしんぶんせき)編集部員。
1963(S.38)年3月12日生まれ
出身:福岡県福岡市。
コンピューター会社のシステムエンジニア。食品工場の生産管理業務に従事。
飲食店の経営を経た後、月刊精神分析編集部。
ひょんな切っ掛けから「精神分析」の世界を知り、約三年半色々な書籍を読み漁る。
「月刊精神分析」の編集に関わりながら、惟能創理先生のセラピーを受けている。
lacan.msl☆gmail.com(☆を@に変えてメール送信願います。スパム対策)
3、ラカン精神科学研究所(京都・滋賀)編
編集部A 久しぶりに日本人の心の故郷(ふるさと)…京都にやって参りました。先ほど、東福寺(京都市東山区本町15丁目778)で見事な紅葉を拝観させていただきました。生憎の小雨の中、萌えるような赤や山吹色そして深緑。日本人の美意識の素晴らしさというか、奥深さを久々に垣間見た思いでございます。夢の様な景色を見る事ができました。お写真では感動の百分の一もお伝えできませんが、よろしければご覧下さいませ。いかがでしょう?日本人に産まれてよかったと思う瞬間ではないでしょうか。






翌日、宣照真理さん(ラカン精神科学研究所:滋賀県大津市)主催のインテグレーター(精神分析家)養成講座に参加させて頂きました…詳細は以下のレポートをご覧下さい。
12月5日。JR唐崎駅(滋賀県大津市)から歩いて5分のラカン精神科学研究所にお邪魔しました。今日は11時からインテグレーター(精神分析家)養成講座が開催されました。参加者は私を含めて5名。今回の講座は「自我論Ⅲ<超自我の発達>」です。参加者には「月刊精神分析2009年07月号 特集 非行と家庭内暴力」の編集に協力を頂いた緒方さん(仮名)も参加されています。「その節は大変世話になりました。ありがとうございました。」

今回のお題である<超自我の発達>の内容を要約すると…乳幼児の精神発達段階における、自我(精神的アクセル)と超自我(精神的ブレーキ)の形成とその関係です。宣照先生は症例をひきながら受講者に分かりやすく「自我」と「超自我」を説明されていました。
講座の後、参加者の皆さんから屈託の無い質問がでます。「今回の講座の内容に今までの自分の子育てを照らすとどうなんだろう?」「今の私の子供への接し方はいいのでしょうか?」。各々、娘や息子の問題がきっかけで自ら精神分析理論を学ぶ為に集った参加者が、自分が抱えた問題や疑問を宣照先生にぶつける。世間の常識としての知識ではなく「本来、人は母とどういう関係をもって人となっていくのか?」「いかにして人は人として育まれるのか?」…根源的な問いの答えを求めている。子供の年齢も、小学生、中学生、高校生、成人と様々である。
宣照先生は一つ一つの質問に丁寧に答えながら、参加者を安心させたり励ましたり…。講座は総じて和やかな雰囲気で進んでいく。
「今までの自分の誤った育児の仕方に愕然とした」「こんな事ならもっと早く知っていればよかった」「私は今まで子供に申し訳ない事をしていました」「この場合の対応もオールOKでいいんでしょうか?」「うちの子は今の方向で進んでくれたら大丈夫だと思います」…参加者からの反応が聞こえてくる。普段、日々の生活を送りながら息子娘との関係で悩んだ事やうまくいかなっかた事がどういう事だったのか?参加者の反応も各々である 。






後日、同研究所で開催した「子育て相談室」に不登校・引きこもりの若者の支援のボランティアをしている方が自分の勉強の為に参加された。ボランティアの方は、参加後、以下ような感想メールを宣照先生に送信されたとの事。内容は…
「本日、参加させていただいた○○です。いつもとは違った角度から問題を考えることが出来ました。引きこもりの問題は家族や社会のあり方が複雑に絡み合っていますので、様々な角度からのアプローチが必要だと思いました。実は、私は"精神分析"と言う治療法をあまり信用していなかったのですが、母と子という関係に絞ってみると非常に明快な理論である事がわかりました。母子関係が全ての人間関係の根源になっているという観点は、引きこもりという問題をみる視点として大変勉強になりました。」…というものでした。
宣照先生は、精神分析家として開業されて早10年以上の経験を積み上げて、多くのクライアントを得て、日々「分析理論講座」や「子育て相談室(旧母親教室)」を精力的に開催され、充実した日々を送られているようです。これからも、悩めるおかあさん達のよき理解者として活躍される事を願わずにはいられません。これからも頑張って下さい。「インテグレーター(精神分析家)養成講座」も盛況なので、宣照先生の受講生から優秀な精神分析家が誕生するのも近いかもしれません。^^。
編集部Aは、紅葉の古都…京都を後にして、深夜高速バスで東京に向かいました。東京では東京精神療法研究所(神奈川県海老名市)の立木歩実先生にお会いする予定です。
4、東京精神療法研究所(東京新宿)編
より大きな地図で 新宿から秋葉原へ(靖国神社経由) を表示





翌早朝。深夜高速バスは新宿西口スバルビル前に到着しました。久しぶりの新宿です。近くのマクドナルドで時間を潰した後、秋葉原に向かいました。前回上京した際には新宿から皇居の南を通って秋葉原にいきましたので、今回は、皇居の北を通ってみます。結果、九段の靖国神社を通る事になりました。境内の銀杏の葉が濃黄に色づいて綺麗でした。
靖国神社は先の大東亜戦争で亡くなった英霊をお祭りした神社で、戦地に赴き亡くなった若人や、特攻で二度と戻る事ができない事を前提に戦場に飛び立った隊員が家族にむけて書いた遺書・遺稿が展示してあります。当時の世情と親子関係を知る上で大変参考になります。
それからしばらく歩くと秋葉原駅の手前、御茶ノ水付近に差し掛かりました。御茶ノ水といえば、精神分析家ネットワークに登録している開聞真達先生主宰の「竹田精神科学研究所」のオフィスがこの近くだと思い探してみました。ありました!「ラフィネお茶の水」このマンションの1103号室。電話をしたところ残念ながら当日は、開聞先生は埼玉のオフィスに出勤しておられて不在でした。いつかお会いする日もあるでしょう。来年の精神分析家サミットかも。楽しみです。
そして…「あの惨劇」が起こった秋葉原に着きました。早いもので「あの惨劇」から一年半経ちました。あの事件の舞台となったsofmap前は今では何も無かったかの様に人々が往来し、加藤智大被告が逮捕されたあの場所も様子が変わっていました。「あの惨劇」については「月刊精神分析 2009年09月号 特集 秋葉原無差別殺傷事件」で詳しく分析しております。宜しければ参考ご覧下さい。





山の手線で新宿に戻り、JR新宿駅でインテグレーター(精神分析家)立木歩実先生(東京精神療法研究所:神奈川県海老名市)とお会いしました。久しぶりです。立木先生は相変わらず元気でご活躍の様子で…詳細は以下のレポートをご覧下さい。
12月6日。師走のJR新宿駅はいつもの賑わいをみせていました(人多過ぎ)。新宿タカシマヤタイムズスクエアに続く回廊はイルミネーションで飾られ歳末気分を盛り上げています。2階入り口で待ち合わせして近くの"BAKERY CAFE"に移動しお話を伺いました。
相変わらず、立木先生のクライアントは、クライアントからの紹介が多いとの事。
5、6年前に分析を受け始めたBさんが、周りの人々にまるで布教活動をするかの様に「精神分析」や「セラピー」の広報活動をしてくれるのだそうだ。「話さずにはいられない」と言う感じ?^^
Bさんは自営業を営んでおられるので人と接する機会が多く、もちろん多数の従業員も抱えていて、店の経済的な運営からお客さんや従業員との接し方まで…Bさんは日々心労が絶える事がない。そんなBさんにとってみれば、立木先生の存在は精神面での大きな支えとなっている。欧米では経営者がセラピストと心的コンサルティング業務の契約する事は普通の事ですが、残念ながら日本ではそこまでセラピスト(精神分析家)の存在は認知されていません。

立木先生曰く「まるで私の仕事は"母親代行業"」と…。時と場合を選らばずクライアントからの訴えに耳を傾け、受け入れ、適切なアドバイスを施す。母親が子供を受け入れ育む様に。世間的な常識でみれば、立木先生のクライアント達も立派に成人した年齢であり…人の親になっている年齢なのだが、残念ながら精神的には欠損した部分が多くある。「だから、精神分析が必要になるの」と立木先生は言う…。 例えば「私の事好き?」と聞いてくるクライアントがいます。それは何を意味するかと言うと「健康な依存」を表します。子どもが母との関係を確認する様に…これは「適切な母子関係」と同意です。そしてこれは、精神分析家とクライアントとの間の信頼関係が構築できたと言う事です。この心的状態を臨床心理学の用語で「ラポール (rapport) 」と言います。
編集部A 確かに「子供との関係がうまくいかない」「自分が何をしたいいのかわからない」「自分が何をしていいのかわからない(自我が形成されていない)」。そんな人(老若男女)は日本中どこにでも溢れている。
今回、立木先生とお話して心に残ったキーワードは「母親代行業」。つまり、"母"になれない母親が世の中には沢山存在すると言う事。"父"らしい父親がいなくなって「父性の復権」と言う本が注目を集めた時期があります。そして今や台頭しているのは「母親代行業」。終に日本は「母性存亡の危機」を迎えたのでしょうか?






「家庭内暴力」「引きこもり」など子供に問題が顕在して親や親族が研究所に相談に訪れる。親(特に母親)は、自分の子供の問題で相談に訪れた筈が「親の方に問題が有る」と精神分析家から指摘されて愕然とする。それを受け入れられる親は、引き続き「子育て相談室(旧母親教室)」で指導を受け、子供に対する対応法を理解し、子供との関わり方を見直し、親子関係や子供の問題が改善する方向に歩みだす。更に「分析理論講座」や「インテグレーター(精神分析家)養成講座」を受講し「人の精神の発達のしく」みを探求し始める母親もいる。しかしながら他方、それを受け入れられない親は、他の解決方法を探すか問題解決を諦める事を選ぶ。
精神分析の世界では、突き詰めていくと「自分」と「自分の子供」の親子関係がうまく行かないのは、「自分の親」と「自分」の親子関係がうまく行かなかった事の負の連鎖なのである…と説く。日本風に言えば、まさしく「親の因果が子に報い…」(因果応報)である。
この負の連鎖をくい止めるには誰かが負の連鎖を断ち切る決意をし、本来の正常な関係に変えて行くしかない。方法は以下の3つである。
①負の親によって養育され、負の親になってしまった自分を精神分析によって変える。自分が変わる事で、自分の子供との親子関係を改善する。
②精神分析家に依頼して自分の子供に精神分析を行う。この方法は精神分析家がよい母(母性を持った母)となって子供を受け入れ育て直す方法である。
③①と②を両方平行して行う。
親子関係の正常化を施すにしても、引きこもり年齢が高齢化している現状だと、子供の親の年齢が70、子供の連例が35というケースもあり、なかなか厳しい状況を迎えている。引きこもりが問題化してから現在に至るまで、有効な施策を実行できなかった社会の責任もあるが、ぼやぼやしていると子供は何の生活力も持たないまま親を失い、社会で孤立していく。
現実の社会では例え「父親」と「母親」が健在でも、"父性"が失せ、今や、"母性"まで消え失せてしまった両親に養育される子供は普通に存在する。運悪く、父も母も不在の環境で育った子供は心(精神)が育たず、世の中で孤立していく。「人とは何か?」「母とは何か?」「父とは何か?」「家族とは何か?」解らないまま成長して、ある日、ある年齢に達して、ある環境に身を置く事で、または、ある事がきっかけで、社会に適合できない心の病が顕在化する。「引きこもり」「家庭内暴力」「不登校」は、その顕在化した一つの現れ方に過ぎない。
自営業Bさんの事業所で働くある若いスタッフは、営業中にお客様が家庭で作ったお菓子を差し入に来店されても、手作りのお菓子を「信じられない…」と言う不思議な顔でみている。生まれてこの方、家庭内でお菓子をつくる経験をした事がないと言う。「母子で一緒にお菓子つくり」等という行為は、既に「正月に近隣の人達と一緒に餅つき」と同様、日本の消えてしまった風物詩なのだろうか?
立木先生は言う。「母親は家庭の中で"先生"になってはいけない。母親は飽くまで"母"なの。子供に対して「指示命令」を繰り返す"先生"ではいけない。」と…
現代日本社会の大命題は「父親は父性を取り戻せ!母親は母性を取り戻せ! 」である。
立木先生の主宰する東京精神療法研究所は神奈川県海老名市にあるのだが、立木先生は頻繁に上京し、都内のクライアントのサポートに勤めている。立木先生の「母親代行業」は盛況の様子だ。それは、ある意味今の日本にとって不幸な事なのかもしれない。
精神分析家はクライアントの足元を照らす松明(たいまつ)の役目を負うときいた事がある。今風に言えば道先案内人(ナビゲーター)である。暗闇の中、自分を見失い、方角を見失った旅人に寄り添い、足元を照らし、ガンダーラの方角を指差す人を人は精神分析家と呼ぶのかもしれない。惟能創理先生はその著書「運命は名前で決まる」にこう記されている「私は"精神分析"をしてきたのではない。"哲学"をしてきたのだ。」…と。私も漠然と考えていた。精神分析の世界を突詰めていくと、最終的には哲学の領域に入っていくのでは?…と。
5、おわりに
立木先生と別れた私は、沢山の人の波でごった返す新宿駅をあとにして、北に向かいました。 立木先生、貴重な時間を割いて頂きまして大変ありがとうございました。
私は、日本海をフェリーで北上し、北海道へ上陸しました。今号の月刊精神分析は、師走の日本を九州から本土を縦断し京都・滋賀、東京経由で北海道へ。2009年の日本の今をお伝えしました。
来年、2010年。平成22年が読者の皆様にとってよい年でありますように祈念しております。それではまた来年、誌上でお会いしましょう。
ご意見ご感想ご要望は、ラカン精神科学研究所内「月刊精神分析」宛にメールでお願い致します。lacan.msl☆gmail.com(☆を@に変えてメール送信願います。スパム対策) 皆様からの屈託のないご意見をお待ちしております。編集部A。
6、Webマガジン月刊精神分析&分析家ネットワーク
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